マネー・ローンダリングとは?
「マネー・ローンダリング(Money Laundering:資金洗浄)」とは、犯罪によって得た収益を、その出所や真の所有者が分からないようにして、捜査機関等による収益の発見や検挙等を逃れようとする行為のことです。
マネー・ローンダリングを放置すると、犯罪による収益が、将来の犯罪活動や犯罪組織の維持・強化に使用され、組織的な犯罪を助長します。また、これが移転して、事業活動に用いられることにより健全な経済活動に重大な悪影響を与えることにもなります。そのため、マネー・ローンダリングを防止することが重要になります。
ここで、日本で国をあげて実施しているマネー・ローンダリング対策について紹介していきます。
麻薬特例法の施行等
日本のマネー・ローンダリング対策は、国際社会の動きに合わせ段階的な進展してきました。まず、1990年には、金融機関に対し、顧客の本人確認実施を要請する旨の通達がされました。1992年には、薬物犯罪から得られた収益への対策を主眼に、「国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律」(「麻薬特例法」)が施行されました。この法律は、薬物犯罪収益に係るマネー・ローンダリングが犯罪化され、金融機関等による薬物犯罪収益に関する疑わしい取引の届出制度が創設されました。
組織的犯罪処罰法の施行
1994年、当時、マネー・ローンダリングの前提犯罪を薬物犯罪に限定していたことから、FATF(マネーロンダリングの資金供給を防ぐ対策の基準をつくる国際組織)でその改善が望まれました。金融機関等が、疑わしい取引の届出を行うに当たり、それが薬物犯罪に関するものであるかどうか判断することは極めて困難なため届出が活発に行われず、届出情報の集約と捜査機関への提供を行う仕組みもなく、疑わしい取引の届出制度は、有効に機能していませんでした。
そこで、2000年には、組織的犯罪処罰法が施行されました。この法律では、犯罪収益対策が行われました。1点目は、マネー・ローンダリングの前提犯罪を薬物犯罪だけでなく重大犯罪にも拡大したこと、2点目は、疑わしい取引の届出の対象犯罪も同様に拡大したこと、3点目は、FIU(マネー・ローダリングに関する疑わしい取引の情報を一元的に受理・分析し、捜査機関等に提供する政府機関)を金融監督庁(後の金融庁)に置くこととし、金融監督庁内に特定金融情報室(Japan Financial Intelligence Office:JAFIO)が設立されました。
テロ資金提供処罰法・金融機関等本人確認法の施行と組織的犯罪処罰法の改正
米国同時多発テロ事件後、2002年、「公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金の提供等の処罰に関する法律」(「テロ資金提供処罰法」)が施行され、テロ資金提供等の行為が犯罪化されました。
同時に組織的犯罪処罰法の一部が改正され、テロ資金提供等の罪が前提犯罪に追加されるとともに、テロ資金そのものが犯罪収益となったため、テロ資金の疑いがある財産に係る取引も疑わしい取引の届出の対象となりました。
2003年「金融機関等による顧客等の本人確認等に関する法律」(「金融機関等本人確認法」)が施行されました。金融機関等本人確認法は、他人名義や架空名義の預貯金口座等が振り込め詐欺等の犯罪に悪用されることが多いことから、2004年の改正により、預貯金通帳等の譲受・譲渡やその勧誘・誘引行為等が処罰されることとなり、法律名も「金融機関等による顧客等の本人確認等及び預金口座等の不正な利用の防止に関する法律」に改められました。
犯罪収益移転防止法の施行と改正等
2003年には、FATF が本人確認等の措置を講ずべき事業者の範囲を非金融業者・職業専門家にも拡大しました。2007年に「犯罪収益移転防止法」が成立しました。本人確認等の措置を講ずべきとされる事業者の範囲の拡大等されました。
2013年、犯罪収益移転防止法の改正が行われました。特定事業者の取引時の確認事項の追加、電話転送サービス事業者の特定事業者への追加、取引時確認等を的確に行うための措置の追加、預貯金通帳等の不正譲渡等に係る罰則の強化等されました。
また、2013年、資金洗浄・テロ資金対策に係る国のリスク評価を行うこと等を盛り込んだ「法人及び法的取極めの悪用を防止するための日本の行動計画」(「日本行動計画」)を定めました。
2016年には、資金決済法の改正により仮想通貨交換業者に対する登録制等の業規制が導入されるとともに、犯罪収益移転防止法の一部改正により仮想通貨交換業者を特定事業者に追加することなどを含む「情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律」が成立しました。
マネー・ローンダリングに関する問題(令和4年 問29)
マネーロンダリングの対策に関する記述として,最も適切なものはどれか。
ア. 金融取引に当たり,口座開設時の取引目的や本人確認を徹底し,資金の出所が疑わしい取引かどうかを監視する。
イ. 紙幣の印刷に当たり,コピー機では再現困難な文字や線,傾けることによって絵が浮かび上がるホログラムなどの技術を用いて,複製を困難にする。
ウ. 税金の徴収に当たり,外国にある子会社の利益を本国の親会社に配当されたものとみなして,本国で課税する。
エ. 投資に当たり,安全性や収益性などの特徴が異なる複数の金融商品を組み合わせることによって,一つの事象によって損失が大きくなるリスクを抑える。
令和4年度 ITパスポート試験公開問題 問29
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ア. 金融取引に当たり,口座開設時の取引目的や本人確認を徹底し,資金の出所が疑わしい取引かどうかを監視する。
正解です。
イ. 紙幣の印刷に当たり,コピー機では再現困難な文字や線,傾けることによって絵が浮かび上がるホログラムなどの技術を用いて,複製を困難にする。
不正解です。
ウ. 税金の徴収に当たり,外国にある子会社の利益を本国の親会社に配当されたものとみなして,本国で課税する。
不正解です。
エ. 投資に当たり,安全性や収益性などの特徴が異なる複数の金融商品を組み合わせることによって,一つの事象によって損失が大きくなるリスクを抑える。
不正解です。
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