かんばん方式とは?
かんばん方式とは、生産現場で、連続する工程間の仕掛在庫を最少にするための仕組みで、トヨタ生産システム(TPS)でジャスト・イン・タイムを実現するために開発された手法のことです。
トヨタ生産方式の柱は「ジャストインタイム(just in time)」と「自働化」になります。ジャストインタイムでは、必要なものを必要なときに必要なだけ作り、調達する生産方式です。ムダな在庫を持たずに滞りなく製品を供給するための理念です。自働化は、工場ラインで異常が発生すると生産機械が自動で停止することにより、不良品のムダを生じさせない管理方法のことです。
ジャストインタイムを実現するための方法が「かんばん方式」になります。トヨタ生産方式は、トヨタ自動車だけでなく協力会社にも広がり、それに従ってかんばん方式も多くの協力会社が取り入れるようになりました。
かんばん方式の「かんばん」とは発注書のような存在になります。製造する商品には「かんばん」と呼ばれる商品管理カードがあり、商品名・品番・保管場所など詳細な情報が書かれています。
顧客から注文が入ったら、後工程の担当者が前工程の担当者にかんばんを渡し、前工程はかんばんに書かれた数量のみを生産します。そして、後工程に製品とかんばんを渡します。すると、後工程の担当者は製品を自分のラインに流して、加工を施します。
後工程の担当者は、製品を使ったらかんばんを取り外して、前工程の担当者に届けます。すると前工程の担当者が再び製品を作り始めます。
かんばん方式の確立の歴史
ジャストインタイムは、1938年にトヨタ自動車の創業者、豊田喜一郎によって提唱されました。しかし、第二次世界大戦の影響もあり、すぐに実現はできず、実際に現場で導入されはじめたのは1948年頃になります。当時のトヨタは作りすぎによる過剰在庫によって経営が圧迫されており、それを解消するための手段としてジャストインタイムが必要になりました。
ジャストインタイム方式を実施するために、当初採用されたのは「スーパーマーケット方式」になります。スーパーマーケット方式とは、当時のトヨタ社員がアメリカに研修旅行に行った際にスーパーマーケットで顧客が欲しいものを買う様子にヒントを得て考案された方式です。
スーパーマーケットは、顧客のニーズに応じて、必要な量のみを仕入れて在庫にしておきます。よって、スーパーマーケットのように、顧客のニーズを把握して顧客が必要とする分だけを調達すれば過剰な在庫が生じにくいと、当時のトヨタ社員が考えました。このスーパーマーケット方式をさらに合理的なスタイルにしたのがかんばん方式になります。そして、1963年にて、かんばん方式がトヨタの全工場に導入されました。
かんばんの種類や役割
かんばんにはいくつかの種類があります。かんばんは、生産を指示するための「生産指示かんばん」と、部品の引き取りに使われる「引き取りかんばん」に大別されます。また、かんばんにはそれぞれ役割があります。ここではかんばんの種類と、かんばんの役割について紹介します。
生産指示かんばんには、組み立てラインでつかう「工程内かんばん」や、プレス加工機等で使う「信号かんばん」の2種類があります。引き取りかんばんには、「工程間引き取りかんばん」と「外注部品納入かんばん」の2種類が存在します。いずれのかんばんにも、品番や品名、1箱に収納する数、工程などが記載されています。
かんばんの役割は運用方法や業種によっても異なりますが、ここでは代表的な3つを紹介します。
- 生産量や運搬の指示:かんばんによって、生産量や運搬の指示をします。何をどれだけ作って、どこに持っていけばよいのかがわかります。また、かんばんが現品表の役割も果たすため、現品間違いなどのミスも防止できます。
- 作りすぎの防止:かんばんの最も大きな役割は、作りすぎの防止ができます。かんばんが来なければ生産しないため、必要量を超えて生産することがないからです。これにより、完成品を保管する倉庫の整備も必要最低限にできるだけでなく、製造現場で必要な原材料の在庫も最低限にすることができるため、あらゆるムダを省くことができます。
- 品質不良の防止:かんばんを運用する際に「100%良品だけを次の工程に渡すこと」というルールを決めておくと、不良品の流出を防止できます。良品だけを引き渡すルールを徹底すれば、手元にある不良品は自工程で発生したものと断定できるため、すぐさま再発防止策を検討できます。
かんばん方式 に関する問題
組立製造販売業A社では経営効率化の戦略として,部品在庫を極限まで削減するためにかんばん方式を導入することにした。この戦略実現のために,A社が在庫管理システムとオンラインで連携させる情報システムとして,最も適切なものはどれか。なお,A社では在庫管理システムで部品在庫も管理している。また,現在は他のどのシステムも在庫管理システムと連携していないものとする。
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出典:令和5年度 ITパスポート試験公開問題 問26
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