長野県佐久市にあるJAXA美笹深宇宙探査用地上局(Misasa Deep Space Station)は、地球から遠く離れた深宇宙探査機と通信を行うための、日本最大級の地上局になります。2021年に運用を開始して以来、はやぶさ2や火星探査機「きぼう」など、数多くのミッションを支えてきました。
この壮大なプロジェクトを支えるのJAXA美笹深宇宙探査用地上局の技術と役割、そして日本の宇宙開発における貢献、また実際にJAXA美笹深宇宙探査用地上局に訪れたので、その時の様子を紹介していきます。
宇宙の彼方へ繋がる、巨大なパラボラアンテナ
JAXA美笹深宇宙探査用地上局のシンボルである54mパラボラアンテナは、電波を遠くまで飛ばし、微弱な信号を拾い取るために最適化されています。この巨大なアンテナは、まるで宇宙と繋がる窓のように、地球と探査機の間を繋ぎます。
美笹深宇宙探査用地上局は日本最大のパラボラアンテナである臼田宇宙空間観測所の後継になります。美笹深宇宙探査用地上局は、臼田宇宙空間観測所の64mアンテナよりも口径が小さいですが、鏡面精度や指向精度、受信機の性能向上により、同等の受信性能を実現しています。
さらに、高精度な追尾システムにより、探査機がどんな方向を向いていても、確実に通信することができます。
深宇宙探査を支える、高度な技術
美笹深宇宙探査用地上局は、単なるアンテナではありません。探査機との通信を成功させるために、様々な高度な技術が組み込まれています。
- 大電力増幅装置(SSPA)
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探査機へ強力な電波を送信するために必要不可欠な装置です。美笹深宇宙探査用地上局では、世界最先端のGaN半導体技術を採用したSSPAを使用しており、従来の装置よりも高効率で小型化を実現しています。
- 低雑音受信機
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探査機から送られる微弱な信号を確実に受信するために必要不可欠な装置です。美笹深宇宙探査用地上局では、宇宙マイクロ波背景放射(CMB)ノイズの影響を抑えるために、高度な冷却技術を採用した受信機を使用しています。
- 追尾システム
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探査機がどんな方向を向いていても、確実にアンテナを向けるために必要不可欠なシステムです。美笹深宇宙探査用地上局では、GPSやレーダーなどを組み合わせた高精度な追尾システムを使用しており、探査機を常に正確に追尾することができます。
日本の宇宙開発を支える、重要な役割
美笹深宇宙探査用地上局は、日本の宇宙開発において重要な役割を果たしています。
- はやぶさ2:小惑星リュウグウからサンプルを持ち帰った探査機「はやぶさ2」の通信を支えました。美笹深宇宙探査用地上局の高度な技術により、はやぶさ2は地球から約4億km離れたリュウグウから、貴重なデータを無事に送ることができました。
- 火星探査機「きぼう」:国際宇宙ステーションに設置されている火星探査機「きぼう」の通信も支えています。美笹深宇宙探査用地上局は、きぼうから送られる火星探査データの受信に貢献しており、火星探査の進展に大きく役立っています。
- 将来の宇宙探査ミッション:美笹深宇宙探査用地上局は、今後打ち上げられる予定の月探査機「SLIM」や金星探査機「Akatsuki2」など、将来の宇宙探査ミッションも支える予定です。
日本の宇宙開発の未来を担う
美笹深宇宙探査用地上局は、日本の宇宙開発における重要な拠点であり、日本の宇宙探査の未来を担う施設です。今後も、技術革新を続けながら、宇宙の謎を解き明かすための重要な役割を果たしていくと思われます。
美笹深宇宙探査用地上局へのアクセス
美笹深宇宙探査用地上局までの公共交通機関はありません。自家用車、レンタカー、タクシー等で移動する必要があります。
JR 佐久平駅からの場合、約25km(車で約40分程度)になります。国道141号線を利用し、八千穂・臼田方面に向かいます。「洞源湖入口」の信号を右折して蓼科スカイラインへ入り、道なりに進みます。美笹局は蓼科スカイライン沿いにあります。夕方から早朝にかけては鹿や小動物が多いため気をつけて運転ください。なお、冬季期間(11月下旬~6月上旬)は蓼科スカイラインが通行止めになるため、佐久市役所への道路通行許可申請の提出及び許可が無いと通行することはできません。
美笹深宇宙探査用地上局の様子
美笹深宇宙探査用地上局は一般公開は原則されていません。外から54mの巨大パラボラアンテナを見ることができます。
まとめ
美笹深宇宙探査用地上局は、日本の宇宙開発における重要な拠点であり、日本の宇宙探査の未来を担う施設になります。この記事で少しでも理解を深めていただければ幸いです。
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