「WPW症候群」という言葉を聞いたことはありますか?WPW症候群は、心臓の電気信号の伝わり方に異常がある病気です。
心臓は、規則正しいリズムで収縮と拡張を繰り返すことで、全身に血液を送り出しています。 このリズムを刻むのが、心臓内の電気信号です。WPW症候群では、本来あるべきでない場所に電気信号の通り道(副伝導路)ができてしまい、心臓のリズムが乱れてしまうことがあります。
今回は、WPW症候群について、原因や症状、診断、治療法などを詳しく解説していきます。
WPW症候群とは?
WPW症候群は、ウォルフ・パーキンソン・ホワイト症候群(Wolff-Parkinson-White syndrome)の略称です。
心臓には、電気信号を伝えるための特別な経路(伝導路)があります。 電気信号は、この伝導路を通って心房から心室へと伝わり、心臓を収縮させます。
WPW症候群では、心房と心室の間に、本来存在しない余分な伝導路(副伝導路)が生まれつき存在します。 この副伝導路を通って電気信号が伝わることで、心臓のリズムが乱れてしまうことがあるのです。

参考:恩賜財団済生会Webサイト https://www.saiseikai.or.jp/medical/disease/wolff-parkinson-white/
WPW症候群の原因
WPW症候群は、先天的な心疾患であり、遺伝的な要因が関わっていると考えられています。 しかし、詳しい原因はまだ解明されていません。
WPW症候群の症状
WPW症候群の主な症状は、頻脈(ひんぱく)と呼ばれる、心拍数が異常に速くなる状態です。
- 動悸: ドキドキしたり、心臓がバクバクする感じ
- めまい: ふらふらする感じ
- 息切れ: 呼吸が速くなったり、苦しくなる感じ
- 失神: 意識を失う
これらの症状は、副伝導路を介して電気信号が異常な経路で伝わることで、心臓のリズムが乱れるために起こります。
WPW症候群の頻脈発作は、発作性上室性頻拍(PSVT)と呼ばれるタイプの不整脈です。 PSVTは、突然始まり、突然終わるのが特徴です。
症状が出ない場合も: WPW症候群のすべての人に症状が現れるわけではありません。 症状がなくても、健康診断などで心電図検査を受けて、WPW症候群と診断されることがあります。
WPW症候群の診断
WPW症候群は、心電図検査で診断されます。
心電図検査では、心臓の電気的な活動を記録することで、心臓のリズムや状態を調べることができます。 WPW症候群の場合、心電図に特徴的な波形(デルタ波)が現れるため、診断が可能です。

WPW症候群の治療法
WPW症候群の治療法は、症状の有無や程度、頻脈発作の頻度などを考慮して決定されます。
- 1. 経過観察:
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症状がない場合は、経過観察となることがあります。 定期的な心電図検査を行い、状態を観察していきます。
- 2. 薬物療法:
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頻脈発作を抑えるために、抗不整脈薬が使用されることがあります。
- 3. カテーテルアブレーション:
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カテーテルアブレーションは、心臓内に細い管(カテーテル)を挿入し、高周波電流を流すことで、副伝導路を焼き切る治療法です。 WPW症候群の根本的な治療法であり、高い成功率を誇ります。 頻脈発作を繰り返す場合や、薬物療法で効果が不十分な場合に適応されます。
WPW症候群の予後
WPW症候群は、適切な治療を行うことで、ほとんどの場合、日常生活に支障なく過ごすことができます。
ただし、まれに、心房細動と呼ばれる不整脈を合併し、重症化することがあります。 心房細動が起こると、動悸やめまい、息切れなどの症状が現れます。
心房細動のリスクが高い場合: 高齢者、心臓に基礎疾患がある方、頻脈発作が頻繁に起こる方などは、心房細動のリスクが高いと言われています。
WPW症候群の日常生活における注意点
WPW症候群と診断された場合、日常生活において以下の点に注意することが大切です。
- 定期的な検査: 医師の指示に従って、定期的に心電図検査を受けましょう。
- 症状が出た時の対応: 頻脈発作が起こった場合は、安静にして、早めに医療機関を受診しましょう。
- 薬の服用: 薬物療法を受けている場合は、医師の指示通りに薬を服用しましょう。
- 生活習慣: バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠など、健康的な生活習慣を心がけましょう。
- 激しい運動: 激しい運動は、頻脈発作を誘発する可能性があるので、注意が必要です。
- アルコール: アルコールの過剰摂取は、心臓に負担をかけるため、控えましょう。
- ストレス: ストレスは、頻脈発作を誘発する可能性があります。 ストレスをため込まないように、リラックスできる時間をつくりましょう。

まとめ
WPW症候群は、心臓の電気信号の伝わり方に異常がある病気です。 頻脈発作などの症状が現れることがありますが、適切な治療を行うことで、ほとんどの場合、日常生活に支障なく過ごすことができます。
WPW症候群と診断された場合は、医師の指示に従って、治療や日常生活における注意点を守ることが大切です。
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