「ITIL」の解説 〜 ITパスポート R6年 問46 〜

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ITILとは、Information Technology Infrastructure Libraryの略であり、ITサービスマネジメントにおけるベストプラクティス(成功事例)をまとめ、ITサービス管理の考え方を整理したもので、ITサービス管理のフレームワークのことです。(最新バージョン:ITIL 2011)

目次

ITILとは?


皆さん、今日は「ITIL(アイティル)」について学びましょう。これは、企業がITサービスをうまく管理するための、世界中で使われている「良いやり方」を集めたものです。

ITIL… なんか難しそうな名前ですね。

大丈夫ですよ。例えるなら、料理のレシピ集みたいなものです。美味しい料理を作るための手順やコツが書かれていますよね?ITILは、良いITサービスを提供するための手順やコツが書かれているんです。

ITサービスをうまく管理する、というのは具体的にどういうことですか?

例えば、会社のパソコンが壊れたときにどう対応するか、新しいシステムを導入するときに何に気をつけるか、インターネットが遅くなったときにどうすればいいか、といったことを、お客様が満足するように、そして効率よく行うための方法が書かれています。

なぜ、そんな「レシピ集」みたいなものが必要なんですか?

もし、ITサービスの管理方法がバラバラだと、お客様が困ったり、無駄なコストがかかったりする可能性があります。ITILのような「共通のやり方」を使うことで、誰がやっても一定の品質でITサービスを提供できるようになるんです。

なるほど、品質を保つためのものなんですね。

その通りです。ITILは、ITサービスを「サービスのライフサイクル」という考え方で管理します。これは、サービスを計画するところから、設計、移行、運用、そして改善していくという、一連の流れのことです。

ライフサイクル… サービスの生まれてから終わりまで、みたいな感じですか?

近いですね。それぞれの段階で、色々な「プロセス」という、具体的な作業の手順が決められています。

例えば、どんなプロセスがあるんですか?

ITパスポート試験でよく出てくるのは、例えば「インシデント管理」です。これは、サービスが止まってしまったときなどに、できるだけ早く復旧するための手順です。他には、「問題管理」といって、同じトラブルが何度も起こらないように原因を突き止めて対策をするプロセスや、「変更管理」といって、システムを変更する際にリスクを減らすための手順などがあります。

「サービスデスク」という言葉も聞いたことがあります。

はい、サービスデスクは、お客様からの問い合わせを受け付けたり、トラブルの対応をしたりする、IT部門の窓口となる機能です。ITILでは、このサービスデスクが、インシデント管理などのプロセスを実行する上で重要な役割を果たします。

ITパスポート試験では、ITILについてどんなことが問われるんですか?

ITパスポート試験では、ITILの基本的な考え方、目的、そして主要なプロセス(特にインシデント管理、問題管理、変更管理、サービスデスク)の目的や、サービスライフサイクルの各段階の名前などが問われることが多いです。

難しそうだけど、例え話を聞くと少し分かりやすいです。

そうですね。ITILは、難しく考えずに、より良いITサービスを提供するための「工夫」が集まったものだと考えると理解しやすいと思いますよ。しっかりとポイントを押さえて、試験に臨んでください。

はい、頑張ります!

ITIL(Information Technology Infrastructure Library)の概要

ITIL(Information Technology Infrastructure Library)とは、ITサービスマネジメント(ITSM)のベストプラクティス(成功事例や推奨される方法)をまとめたフレームワークです。イギリス政府機関であるCCTA(Central Computer and Telecommunications Agency、現OGC:Office of Government Commerce)によって開発され、現在ではAxelos社が管理しています。

ITILは、特定の製品や技術に依存せず、あらゆる規模や種類の組織に適用できる汎用性の高いガイドラインです。その目的は、ITサービスをビジネスニーズに合わせて最適化し、顧客に価値を提供することにあります。

ITILの主要な概念

ITILを理解する上で、いくつかの重要な概念を押さえておく必要があります。

  • サービス(Service): 顧客に価値を提供する手段であり、顧客が特定の成果を達成するのを支援します。ITILにおけるサービスは、単なる技術的な機能だけでなく、それを利用するためのプロセスやサポート体制を含んだものとして捉えられます。
  • プロセス(Process): 特定の目標を達成するために設計された、一連の構造化された活動です。ITILは、ITサービスマネジメントに必要な多くのプロセスを定義しています。
  • 機能(Function): 特定のタスクや活動を実行するために必要な人々やツールをまとめた組織単位です。例えば、サービスデスクは顧客からの問い合わせ対応を行う機能です。
  • 役割(Role): 特定のプロセスや機能において、責任や権限を持つ人々のことです。例えば、インシデントマネージャーはインシデント管理プロセスにおける主要な役割です。
  • 価値(Value): ITサービスを利用することによって、顧客が得られる便益、効用、重要性のことです。ITILは、ITサービスがビジネスに価値を提供することを重視します。

ITILのサービスライフサイクル

ITILは、ITサービスのライフサイクルを以下の5つの段階に分けて管理することを提唱しています。各段階は独立していますが、相互に連携し、継続的な改善を目指します。

STEP
サービス戦略(Service Strategy):
  • ITサービスをビジネス戦略と整合させ、長期的な目標や方向性を定める段階です。どのようなサービスを、誰に、どのように提供するのかを決定し、競争優位性を確立することを目指します。
  • 主要なプロセス: 需要管理、財務管理(ITサービス向け)、サービスポートフォリオ管理など。
STEP
サービス設計(Service Design):
  • サービス戦略に基づいて、具体的なITサービス、管理システム、プロセスなどを設計する段階です。可用性、信頼性、セキュリティ、コストなどを考慮して、サービスのブループリントを作成します。
  • 主要なプロセス: キャパシティ管理、可用性管理、サービスレベル管理、ITサービス継続性管理、セキュリティ管理、サプライヤー管理など。
STEP
サービス移行(Service Transition):
  • 設計された新しいITサービスや変更されたITサービスを、開発環境から本番環境へ安全かつ円滑に移行する段階です。移行計画の作成、テスト、展開、利害関係者とのコミュニケーションなどが含まれます。
  • 主要なプロセス: 変更管理、サービス資産および構成管理、リリースおよび展開管理、知識管理など。
STEP
サービス運用(Service Operation):
  • 本番環境で稼働しているITサービスを、安定的に運用し、顧客に価値を提供し続ける段階です。日々の運用管理、インシデント対応、問題管理、サービス要求管理などが中心となります。
  • 主要なプロセス: インシデント管理、問題管理、イベント管理、サービス要求管理、アクセス管理など。
  • 主要な機能: サービスデスク、技術管理、IT運用管理、アプリケーション管理。
STEP
継続的サービス改善(Continual Service Improvement – CSI):
  • ITサービス全体とその管理プロセスを継続的に評価し、改善していく段階です。サービスの品質向上、コスト削減、顧客満足度向上などを目指します。
  • 主要なプロセス: 7段階改善プロセス。

ITILの主要なプロセス

ITILには多くのプロセスが存在しますが、ITパスポート試験で特に重要なプロセスをいくつか解説します。

  • インシデント管理(Incident Management): サービスの計画外の中断や品質低下(インシデント)を、可能な限り迅速に回復させ、ビジネスへの影響を最小限に抑えることを目的とします。サービスデスクが最初の窓口となることが多いです。
  • 問題管理(Problem Management): 発生したインシデントの根本原因を特定し、再発を防ぐための対策を講じることを目的とします。既知のエラーの管理や恒久対策の実施が含まれます。
  • 変更管理(Change Management): ITサービスに対する全ての変更を管理し、リスクを最小限に抑えながら、必要な変更を確実かつ迅速に実施することを目的とします。変更要求の承認、影響分析、実装、レビューなどが含まれます。
  • サービスレベル管理(Service Level Management – SLM): 顧客との間でサービスレベル合意書(SLA)を作成し、合意されたサービスレベルを監視・報告し、維持・改善することを目的とします。顧客満足度を高めるために重要なプロセスです。
  • サービスデスク(Service Desk): 顧客からの問い合わせ、インシデント報告、サービス要求など、顧客とIT部門の単一の窓口として機能します。効率的なコミュニケーションとサポートを提供します。
  • サービス資産および構成管理(Service Asset and Configuration Management – SACM): ITサービスの提供に必要な全ての資産(ハードウェア、ソフトウェア、文書など)とその構成情報を正確に把握し、管理することを目的とします。構成管理データベース(CMDB)が重要なツールとなります。

ITILのメリット

ITILを導入することで、組織は以下のようなメリットを享受できます。

  • 顧客満足度の向上: 顧客のニーズに合った高品質なITサービスを提供できるようになります。
  • ビジネスとITの連携強化: ITサービスがビジネス目標の達成に貢献するようになります。
  • 効率性と生産性の向上: 標準化されたプロセスと効率的なリソース活用により、運用コストを削減し、生産性を向上させます。
  • リスク管理の強化: ITサービスに関連するリスクを特定し、管理することで、事業継続性を確保します。
  • サービスの信頼性と安定性の向上: インシデントや問題の発生を抑制し、サービスの中断時間を最小限に抑えます。

ITILに関する問題(令和6年問46)

ITサービスマネジメントの管理プロセスに関する記述 a~c と用語の適切な組合せはどれか。

a. ITサービスの変更を実装するためのプロセス

b. インシデントの根本原因を突き止めて解決策を提供するためのプロセス

c. 組織が所有している IT資産を把握するためのプロセス

 ア.  a:構成管理  b:問題管理  c:リリース及び展開管理     

イ.  a:構成管理  b:リリース及び展開管理  c:問題管理

  ウ.  a:問題管理  b:リリース及び展開管理  c:構成管理     

エ.  a:リリース及び展開管理  b:問題管理  c:構成管理

出典:令和6年度  ITパスポート試験公開問題 問46

正しいと思う選択肢をクリックしてみてください!!!(解答を記載しています。)

ア.  a:構成管理  b:問題管理  c:リリース及び展開管理     

不正解です。aはリリース及び展開管理です。また、cは構成管理です。

イ.  a:構成管理  b:リリース及び展開管理  c:問題管理

不正解です。bは問題管理です。また、aはリリース及び展開管理です。cは構成管理です。

ウ.  a:問題管理  b:リリース及び展開管理  c:構成管理 

不正解です。aはリリース及び展開管理です。また、bは問題管理です。

エ.  a:リリース及び展開管理  b:問題管理  c:構成管理

正解です。

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